これはインドネシア製造業の実態であり、また当地に進出している多数の企業の認識、方針であろう。
自動車の組み立てライン、金属加工ライン、仕事柄様々な工場を見学させて戴いているが、この国の工場では基本的に人海戦術に頼ったモノづくりがメジャーである。
まさに人こそ資本である。
しかし、今やその資本は悩ましいまでのコストリスクとなっている。
この1月からジャカルタ周辺、JABOTABEK地域の労働者最低賃金が40%近く上昇したのだ。
更にそれを見た他の地方の最低賃金も軒並み2桁上昇している賃上げスパイラルのような状況に陥っている。
ライン工の賃金をはじめ単純労働者の賃金は最低賃金に限りなく近い為、この賃金押し上げはインドネシア全土のモノづくりにおいて製造コストにモロに響く。
何故こんな馬鹿みたいな賃金上昇になったのか、その理由は過激化する労使交渉、労働者の暴走に屈服する行政にある。
本国の最低賃金は政労使3者間で決められることとなっているが、今年は政労2者のみで強制的に決められてしまったのである。
経営者側としたらたまったものではない。
しかし抗議の声は届かなかった。
労働者は大喜びだろう、名目賃金が40%も伸びるのだから。
だが実質賃金はどうだろうか。
確かに現在は物価上昇率は年率4%程度である。従って上昇した賃金はほぼ全て可処分所得に充当され生活が向上するであろうという見たては理解できる。
しかし今後物価は確実に上がるだろう。それも異常なスピードで。
人件費上昇による製造コスト、物流コスト、全ての上昇分が最終的には物価に反映され極度のインフレとなる懸念が高い。
ただでさえデノミネーションを目前に控え、インフレ懸念が高まっている中で、これは決定的な一打になり得る。
ひいては労働者の目論見通りの豊かな生活は泡沫の夢に終わる可能性が高い。
今のインドネシアは自動車産業を中心にまさにバブル景気のような状況を迎えている、乃至はこれから迎えるであろう千載一遇のチャンスといえる時期にある。
多数の日系企業を始め、世界がBRICsに次ぐ市場と認識し始め、自動車産業をはじめ当地に新規参入してくる乃至は当地事業を拡大する外国企業が惜しみない投資を行っている。
しかしこの賃金上昇がこのチャンスを潰す足かせとなる恐れを感じる。
この市場はまだまだ未熟であり、この国だけで伸びていく力は少ない。
まだまだ諸外国からの投資、援助が必要であるが、これが逃げてしまうと数年分の後戻りは避けられない。
事実、撤退を決めた企業もあると聞いている。
撤退、閉鎖となれば労働者はその地位を無職に否応なく変更せざるをえない。
返り討ちに遭った所得なき者は経済を停滞させるのみである。
可哀想なのは労働者自身だけではない。
ここ数年に投資をした各企業にとっては残るも手を引くも難しい局面だろう。
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